胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

読書生活

映画『福田村事件』

9月4日に『福田村事件』を観てきた。 関東大震災における朝鮮人虐殺は知っていた。加藤直樹著『九月、東京の路上で』他の関東大震災関係の本がわたしの本棚がある。なぜ、興味を持っていたか。昔むかし、教科書か何かで「関東大震災で朝鮮人が虐殺された」と…

車谷長吉『漂流物・武蔵丸』

漂流物・武蔵丸 (中公文庫 く 29-1) 作者:車谷 長吉 中央公論新社 Amazon 我が家では車谷長吉ブームが起こっていた。名前は知っていても読んだことが無かった。 なぜ、車谷長吉を読みはじめたのか。そもそもは、柳本々々さんの『バームクーヘンでわたしは眠…

『愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年』大貫智子

愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年 作者:大貫 智子 小学館 Amazon 本屋で見つけた本。なぜか気になり手に取る。パラパラと読むとイ・ジュンソプは韓国では国民的な画家で、妻は日本女性だとある。口絵のカラー写真のイ・ジュンソプの絵は好みで…

マーガレッド・アトウッド『侍女の物語』『誓願』

『侍女の物語』 マーガレット・アトウッド/斎藤英治・訳 (早川書房) 『誓願』 マーガレット・アトウッド/鴻巣友季子・訳 (早川書房) 新春に放映されたNHKの「100分deフェミニズム」をみた。そこで紹介された本でマーガレット・アトウッドを読んでいなかっ…

『歌集 小さな抵抗ー殺戮を拒んだ日本兵士』渡部良三著

歌集 小さな抵抗――殺戮を拒んだ日本兵 (岩波現代文庫) 作者:渡部 良三 岩波書店 Amazon 『歌集 小さな抵抗 ー殺戮を拒んだ日本兵』 渡部良三 (2011 岩波書店) キリスト者である著者は学徒出陣で中国へわたる。新米兵士に根性をつけるため捕虜の中国人を殺す…

中井久夫『戦争と平和 ある観察』

戦争と平和 ある観察(増補新装版) 作者:中井 久夫 人文書院 Amazon 「100分de名著」の中井久男特集の最後に「戦争と平和 ある観察」が取り上げられた。前回のブログのつづきとなるが、指南役の精神科医・斎藤環が「このエッセイで特に重要だと感じる中井の…

中井久夫「戦争と平和についての観察」

NHK 100分 de 名著 中井久夫スペシャル 2022年 12月 [雑誌] (NHKテキスト) NHK出版 Amazon 「100分de名著」で中井久夫を取り上げるというので、NHKオンデマンドで見た。彼の精神の病気についての様々な論考は精神科病院で働いていた時に読んで…

高見順『敗戦日記』

敗戦日記 (中公文庫BIBLIO) 作者:高見 順 中央公論新社 Amazon 『敗戦日記』高見順(中公文庫) 高見順の日記から昭和20年(1945年)の1年間の記録が載っている。 高見順は、鎌倉に住む文士。でも、疎開するお金もないので、悩みながらも鎌倉を離れることができ…

吉田美和子『単独者のあくび 尾形亀之助』

単独者のあくび 尾形亀之助 作者:吉田 美和子 木犀社 Amazon 『単独者のあくび 尾形亀之助』 吉田美和子著 (木犀社・2010年) この本は知り合いのTwitterなどに書かれていて目にはしていたのに読んでいなかった。 ページ数多くてお値段も高い。ようやくどっこ…

伊藤比呂美『たそがれてゆく子さん』

たそがれてゆく子さん (中公文庫 い 110-6) 作者:伊藤 比呂美 中央公論新社 Amazon 『たそがれてゆく子さん』 伊藤比呂美 (中公文庫) きのう本屋で別の本を探していたけど、この本をまだ読んでいなかったと買ってしまい。1日で読む。 著者と同年代である。『…

逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』

同志少女よ、敵を撃て 作者:逢坂 冬馬 早川書房 Amazon 今話題の『同志少女よ、敵を撃て』を読みました。 少し前にNHKラジオ「飛ぶ教室」で高橋源一郎が紹介していたので、図書館で検索したら、すでに蔵書されていた。もちろん貸し出し中。一昨日、図書館か…

徐京植『プリーモ・レーヴィへの旅』・プリーモ・レーヴィ『アウシュヴィッツは終わらない』

プリーモ・レーヴィへの旅 作者:徐 京植 朝日新聞社 Amazon NHKオンデマンドで「こころの時代」のアーカイブ「フクシマを歩いて」を見た。 徐京植という作家を知らなかった。オルテガの訳者だった佐々木孝さんも知らなかった。プリーモ・レーヴィも知らなか…

北林谷栄『九十三齢春秋』

九十三齢春秋 作者:北林 谷榮 岩波書店 Amazon 古本屋で北林谷栄さんの本を見つけて買ってしまう。 なつかしい役者さんだ。老け役といえば北林谷栄であった。 ずいぶん若い時分から老け役を演じた。 そのきっかけは、宇野重吉が久保田万太郎演出の舞台での老…

財部鳥子『天府冥府』

天府 冥府 作者:財部 鳥子 講談社 Amazon 『天府 冥府』 財部鳥子 (講談社) 詩人・財部鳥子の自伝的の小説である。 「天府」は満州のジャムスのホテルに暮らす一家の様子が描かれる。中国人に囲まれゆったり時間は流れる外で、匪賊の中国人の死体が転がって…

村松圭一郎『くらしのアナキズム』

くらしのアナキズム 作者:松村 圭一郎 ミシマ社 Amazon 「アナキズム」というと、無政府主義で国を転覆する、というイメージ。政府は無政府主義者たちを怖がって、大杉栄と伊藤野枝を虐殺した。共産主義よりわけわからないから、怖がったのだろうか。 資本主…

米原万里『噓つきアーニャの真っ赤な真実』

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫) 作者:米原 万里 KADOKAWA Amazon 『噓つきアーニャの真っ赤な真実』 米原万里著 (角川文庫) 先週は忙しかった。調べたいこともあって1泊2日で弘前へ行った。 日帰りでもよかったのだが、調べたら良い感じのホテルが…

『片手袋研究入門』 石井公二著

片手袋研究入門 小さな落としものから読み解く都市と人 作者:石井 公二 実業之日本社 Amazon 片手袋。わたしも気になっていた。道路によく落ちている軍手。なぜ、軍手が落ちているんだ。トラックなどの作業のため置きっぱなしになった? ガソリンを入れてい…

キム・ジヘ著『差別はたいてい悪意のない人がする』

差別はたいてい悪意のない人がする: 見えない排除に気づくための10章 作者:キム ジヘ 大月書店 Amazon 『差別はたいてい悪意のない人がする』 キム・ジヘ著 (大月書店 2021) 差別にする人たちは悪意がない。だってそれが当然なのだから仕方がない。正義は我…

小柳ちひろ『女たちのシベリア抑留』

女たちのシベリア抑留 作者:ちひろ, 小柳 文藝春秋 Amazon 『女たちのシベリア抑留』 小柳ちひろ著 2019年 (文藝春秋) BSIスペシャル「女たちのシベリア抑留」(初回放送2014年8月12日)のディレクター、小柳ちひろさんが書いた本である。 身近にシベリアから…

東畑開人『心はどこに消えた』

心はどこへ消えた? (文春e-book) 作者:東畑 開人 文藝春秋 Amazon 東畑開人さんの『野の医者は笑う』と『居るのはつらいよ』は面白かった。『居るのはつらいよ』はその年のわたしのベスト1の本だと思った。だから久々の単行本に期待した。『週刊文春』の連…

『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?』

時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。 作者:和田靜香,小川淳也 左右社* Amazon 『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?』 和田静香/協力・小川淳也 (左右社) 10月31日の衆議院選挙の日にこの本を読んでいた。…

『すべての見えない光』アンソニー・ドーア

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス) 作者:ドーア,アンソニー 新潮社 Amazon 『すべての見えない光』 アンソニー・ドーア (新潮社) すごい小説だった。うなりながら読む。ひきこまれながら読む。ハラハラしながら読む。うっとりしながら読む。 詩情…

『シリアの秘密図書館』

シリアの秘密図書館 (瓦礫から取り出した本で図書館を作った人々) 作者:デルフィーヌ・ミヌーイ 発売日: 2018/02/28 メディア: 単行本 『シリアの秘密図書館 瓦礫から取り出した本で図書館を作った人々』 デルフィーヌ・ミヌーイ著 藤田真利子訳 (東京創元社…

『石原吉郎 シベリア抑留詩人の生と詩』 細見和之著

石原吉郎 - シベリア抑留詩人の生と詩 作者:細見 和之 発売日: 2015/08/24 メディア: 単行本 図書館の本棚でなにげなくとった本。 石原吉郎の名は知っていたけど、詩も人生もよく知らなかった。 本人の作品より先に伝記を読んで予習みたいなものであるが、細…

礒崎純一『龍彦親王航海記』

龍彦親王航海記:澁澤龍彦伝 作者:礒崎 純一 発売日: 2019/10/31 メディア: 単行本 『龍彦親王航海記』 礒崎純一著 (白水社) 澁澤龍彦の伝記である。わたしも若い頃好きだった。『ねむり姫』や『高丘親王航海記』等は日本文学の中では気に入った作品で、いま…

斎藤環・與那覇潤『心を病んだらいけないの?』

心を病んだらいけないの?: うつ病社会の処方箋 (新潮選書) 作者:斎藤 環,與那覇 潤 発売日: 2020/05/27 メディア: 単行本(ソフトカバー) 『心を病んだらいけないの? うつ病社会の処方箋』斎藤環・與那覇潤 (新潮社) わかりやすい本だ。わかりやすくもっと…

ハン・ガン著『少年が来る』

少年が来る (新しい韓国の文学) 作者:ガン, ハン 発売日: 2016/10/27 メディア: 単行本 ハン・ガン著『少年が来る』。ひさしぶりに図書館へ行き、この本を借りてきた。ハン・ガンの『すべての白いものたち』を読んで、詩のように素敵だなと思ったので、この…

藤原てい『流れる星は生きている』

流れる星は生きている (中公文庫) 作者:藤原 てい 発売日: 2002/07/25 メディア: 文庫 『流れる星は生きている』 藤原てい 昭和24年5月刊 日比谷出版社 昭和51年2月刊 中公文庫 8月15日の敗戦の日あたりにNHKラジオで放送する恒例の高橋源一郎が戦争関連の本…

齋藤陽道『異なり記念日』

異なり記念日 (シリーズ ケアをひらく) 作者:齋藤陽道 発売日: 2018/07/23 メディア: 単行本 『異なり記念日』 齋藤陽道 (医学書院 シリーズケアをひらく) 『暮らしの手帖』で齋藤陽道さんの名は、連載エッセイを読んでいるので知っていました。 聴覚障害を…

安田浩一『団地と移民』

団地と移民 課題最先端「空間」の闘い (角川書店単行本) 作者:安田 浩一 発売日: 2019/03/23 メディア: Kindle版 『団地と移民』 安田浩一 2019年 (株式会社KADOKAWA) 団地に住みたいと思っている。 公団住宅にいま外国人が多く住んでいる。問題にしているの…