胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

宮本常一著『辺境を歩いた人々』

北海道や南の島を探検して歩いた人々。日本がアイヌ琉球を侵略するお先棒を担いだという考えも浮かぶ。でも、ここに出てきた人はアイヌの言葉を覚え、その土地の生活や文化を大事に思っている。好奇心が強いのだ。どこにでも溶け込み。歩く。

宮本常一が子どもたちのために書いた本なのかしら。とても読みやすい文体だった。

辺境を歩いた人々 (河出文庫)

辺境を歩いた人々 (河出文庫)

 

 ・近藤富蔵

「小心者のかれが無法者を殺し、八丈島に流されるや、島の歴史・文化・生産などをしらべあげ、『八丈実記』をまとめ、島に生涯をささげる」

 富蔵の父は近藤重蔵蝦夷地を探検した学者だったが家庭人としては失格だったようだ。富蔵は父に反発しながらも、研究という生き方を小さいころから学んでいたのだろう。この1話目から泣いてしまうのだった。

 

松浦武四郎

「未開の大陸北海道をくまなくあるいて、内陸の地形をくわしくしるした「えぞ図」をみごとに完成。かれは北海道の名づけ親でもある」

 アイヌの言葉を自由に話せるようになったとか。歩くことは苦にならなかった。なんの機会もない時代に内陸の正確な地図をつくったというのはおどろく。どんな方法なのだろう。荷物はどれほどのものだったのか。スマホ片手のわたしたちは、脳も足も退化していくのではないか。

 

菅江真澄

「みちのくの風土を愛し、底に流れる人のこころの美しさに魅せられながら、一生を旅にすごし、江戸後期の民衆の生活をこまかに記録した」

 角館が終焉の地。この方の名をあちこちでみたことがある。知っている名だが、どんな人だったか知らなかった。知ろうともしなかった。薬草に詳しく医者の役割もしていたので、どこでも生きられたというのが面白い。天明のききんのみちのくの現状を見、東北の爆発的な春に狂喜しただろう。

 

・笹森儀助

「北は千島、南は琉球・台湾までつぶさにあるいて民情を明らかにし、多くの記録をのこした。のち奄美大島島司として島の開発につくす」

 本文に「伊能嘉矩と台湾」として伊能嘉矩のことに詳しく触れいる。たしか去年か博物館で伊能嘉矩展を行っていたのに興味を持たなかった。伊能嘉矩は遠野出身である。遠野物語より誇りにしていい人かもしれない。