胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

青木冨貴子著『ライかでグッドバイ -カメラマン沢田教一が撃たれた日』

 

ライカでグッドバイ: カメラマン沢田教一が撃たれた日 (ちくま文庫)
 

 ホーチミンの戦争跡証記念館に戦場カメラマンを紹介する部屋があり、沢田教一のコーナーもあった。青森生まれの沢田教一のことはなにも知らないが、この文庫にも使われている「安全への逃避」という写真は見たことがある。この本のタイトルも知っていたけど、読まないまま年月が経ってしまった。

戦場カメラマンは一種の麻薬のようなものなのかもしれない。危険な場所に身を置きつづけるうちにその緊張が人生のはりになってしまい、普通の生活にもどれなくなる。軍人もそうかもしれない。現場ではなんとも思わなかった死体も平和な生活の中で彼らのこころを蝕む。平和な生活の中でなにに依存していけばいい。それで、アルコールや薬物にはまることもあるだろう。

青木冨貴子が描く1980年頃のホーチミンはまだまだ戦争の傷が残る町だったが、2019年の繁栄と人ごみのホーチミン。戦争から立ち直ったと言えるのかもしれないが、そもそもあの戦争はなんのためだったか、共産党拡大防止? 今となってはむなしい戦争だ。たんに兵器を使いたかったためではないか。