胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

藤本和子著『塩を食う女たち』

 

 

黒人であることと女性であること。二重に差別、暴力、人権迫害のなかに身をおくことになる女性たちにインタビューした本。1982年に単行本で刊行された本である。それから30年以上たち黒人の世界はどうなったのだろうか。黒人の大統領は出て優秀な人材もいっぱいいるけれど、白人も黒人も黄色人種も持つものと持たざる者に分断がすすんでいるような気持ちになる。

 

藤本和子のあとがきより

「閉じ込められたくない、という気持を抱いてわたしは暮らしてきたと思う。永遠に傷つくことのないかに見えるにほん的共同体意識や、図式に変身しがちな思想の数々に閉じ込められたくないと。意識をくり返し脱皮し、ひろびろと視野を開いて、生の実質をつかみたいのだと感じてきた。」

 

黒人の悲惨な歴史を思うと言えないことだが、自分のルーツへの信念があるのはうらやましい。根無し草のような状態にヒトは耐えられないからルーツを求め、所属意識をもちたい。そういう感情になった時に、「ニホン人としての自分」に頼ろうとすると、どうしても天皇や神話の世界へいき、右肩があがっていく。そうではないニホンはないのだろうか。力強い薪を担ぎ上げた少女のような庶民のたくましさがニホン人にあったはずである。

そしてわたしのルーツは「ニホン」ではなく「アジア」であることが、この顔が証明している。アジアの寄せ集めの顔。しかしわたしの中にもアフリカの恵みの血が1滴、ほとぼしり走っているのかもしれない。