胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

映画『カティンの森』

 

 

カティンの森 (字幕版)

カティンの森 (字幕版)

 

 ハン・ガンの『すべての、しろいものたち』を読んでいて、「1945年の十月から六カ月あまりの間に都市の95パーセントが破壊された」という文で、作者が住みはじめた町がポーランドワルシャワだとわかった。読みはじめはドイツだと思い込んでいた。

それで、ワルシャワ蜂起に関係する映画『カティンの森』を見ることにする。

アンジェイ・ワイダ監督の80歳の作品である。監督の父親がカティンの森の犠牲者とのこと。映画は虐殺された将校の家族たちの姿を描く。ドイツに支配されソ連に支配され、精いっぱい抵抗する妻、敵側におもてむきは従う女性、息子を待つ母、女性たちが描かれる。「この国に自由なんかない。これからもずっと」という校長の言葉。つねに密告や監視におびえる世界。大学の教授たちは一網打尽にされ、文学も芸術もささやかな楽しみも踏みにじられる。

それは、日本でもあったこと。日本もヨソノ国で行ったこと。こういうことを忘れる。

支配者の意向でニュースや情報が流される。疑問に思った国民は非国民である。

そして支配者にすぐ迎合する人間は、こんなに歴史を重ねてもウジ虫のように湧いてくることに絶望する。

映画のラストは、次々と将校、兵士が銃殺され穴に投げ込まれ、ブルトーザーで土をかぶさられる場面でおわる。虫けらのように。捕虜の規定違反を隠しておこなわれたこと。ソ連は、ゴルバチョフの時代になって、この虐殺への関与を認めたらしい。