ハン・ガン著『菜食主義者』
『菜食主義者』 ハン・ガン著 / きむ・ふな訳 (クオン)
『すべての、白いものたちの』から2冊目のハン・ガン。
https://blog.hatena.ne.jp/meme2008/meme2008.hatenablog.com/edit?entry=17680117127210887254
昔から思うことがある。精神科病院に勤めていた。
最近では狂うという言い方はないと思う。症状や障害。病気なのだ
純粋に狂うという病気も少なくなってきた。どちらかというと、うつ病や被害妄想やパーソナリティ障害など現実をひきずって現実に悩む病気のほうが目立っている。なかなか純粋に狂うこともむずかしい時代なのかも。統合失調症も減ってきていると聞く。
昔から思っていたというのは、狂えることも才能なのだ。選ばれた人たちなのかもしれない。魂がピュアというか。わたしにはうらやましいものがあった。狂って一生病院生活でなにがうらやましいのかと言われそうだけど、醜い現実と戦わないでいいからかもしれない。狂っても自分の中の何かと戦っているのかもしれないが、死にたい気持ちに責め殴られているかもしれないが、平和な境地をもっているのかもしれない。興味深い人たちだ。でも、本当に狂うのもむずかしい。現実の消費文化と世間知のなかで純粋に狂うのはむずかしい。
この小説では、ひさしぶりに純粋に狂っていく姿をみた。
ただ、どんなに辛くたって狂えない人間もいる。もともとの強さがある。主人公の姉がそうだが、疲れても疲れても生活し続けないといけない。その姿のほうが心痛める。姉に幸あれと祈りたくなる。