加藤直樹著『九月、東京の路上で』
『九月、東京の路上で』 加藤直樹著 (ころから) 2014年
9月1日は関東大震災が発生した日であり、今は防災の日になっている。
関東大震災の混乱の中でおおくの朝鮮人が虐殺され、なかには中国人も東京モノではない方言のある日本人も殺された。殺したのは軍隊や警察ではなく、一般の人たち。自警団をつくり、朝鮮人を見るととびかかった。
そういう歴史的事実を、なかったことにする動きがあるらしい。
わたしは学生時代の記憶は少ないが、教科書の関東大震災での朝鮮人虐殺、大杉栄と伊藤野枝の虐殺の記述を覚えている。いまの教科書は関東大震災でおこった虐殺にはあまり触れられていないようだ。「学び舎」という教科書だけは詳しく記述されているらしいが、「学び舎」の教科書を使うのは灘とか麻布などの一流中学校ぐらいだと。それってエリートは本当のことを知り、一般の奴隷的な国民の子には本当のことを教えないということのような気持ちになる。学校は国や企業のために役に立つ人材を作るところだとしたら、へんな疑問は持たせてはいけない。日本人は素晴らしいとだけ教えておけばいいということだろうか。
日本の軍隊もそうとう残忍だった。アメリカの捕虜になったほうがましだった。
でも、関東大震災でショックなのは、軍人でもない隣の普通の人たちが道理も分からず殺人鬼になって、まわりの人も子供までが喜んで手を貸したことだ。そんなことがあったなどと考えるのは耐えられない。隠したい気持ちもわかる。でも、きちんと検証しないと、わたしたちはまた誤りをおかす。いまでも、災害が起こると外国人が窃盗するとうわさが流れる。災害がなくても「外人が多くなってぶっそうだ」と言う。統計をみると、犯罪は圧倒的に日本人が多いのに。わたしたちはなぜ、アジア人を下にみるのだろうか。中国の韓国の遺産を受け継ぎこうやって文字も書き、文化を発達してきたのに。そこをよく考えないといけないと思った。
歴史とはその国がつくるもの。偽りも多い。とくに学問があまり好きではない政府には都合の悪いことは隠す癖がある。いつの時代もおなじこと。だから、オーラルヒストリー(口述歴史)で歴史の真実を聞いて残していくことは大事だと思う。この本はそういう1冊だ。ぜひ読んでもらいたい。