胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

新訳 茶の本

新訳 茶の本 (明石選書)

新訳 茶の本 (明石選書)

 松本清張の『岡倉天心』を読んだので、彼の代表作を手に取りました。岡倉天心は英語でこの本を書いたので、訳されています。まだパラパラしか読んでいませんが、この本からよく引用される文書を下記に記しておきます。

 

日本が平和で穏やかな技芸にふけっているあいだ、日本を野蛮な国だとみていました。そして、満州の戦場で大殺戮に手を染めると文明国扱いするのです。最近〈侍の掟〉についてはさかんに議論されるようになりました―兵士たちを自己犠牲へと駆り立てる〈死の術〉についてです。しかし、〈性の術〉についてたくさんのことを語っている茶の湯については、注目されたことは極めて少ないのです。わたしたちが文明国とよばれるために、身の毛もよだつ戦争の栄光が必要だというなら、わたしたちは喜んで野蛮人でありつづけたいと思います。わたしたちの芸術と理想にしかるべき敬意が払われるそのときがくるのを、喜んで待ちつづけたいと思います。

 こう書いた岡倉天心ですが、天心の唱えた「亜細亜はひとつ」という言葉が戦時体制の中で利用されていったという皮肉があるようです。