食べごしらえおままごと
- 作者: 石牟礼道子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/09/21
- メディア: 文庫
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昨日、息子が「ジュンク堂へ行ってくる」と言うので、「あったら、買って来て」と頼んで買ってきてもらいました。午後、マンションのベランダで「船っこ流し」の花火を待ちながら、いっきに読みました。
なんとも上品な世界が広がる。おとぎ話のよう。
上品な世界は、過酷な労働と共にあるのだが、
人間存在の自信のようなものがある。
著者もなつかしがってばかりはいない。
女たちの労働時間の長さ。本ひとつ読む暇もなく、家族に尽くした。
電気釜の便利さにありがたく思う。
それでも、すこし便利になりすぎた。
食べ物の味がわからなくなった。
煮しめを作って、あんを練り、餅をついて、隣近所にふるまう。
これは、自分のところで野菜も豆も米も生産していたから、できたことだろう。
スーパーで買えば、何十人分もの材料費は高くつく。
家族が食べる分だけ作る。
お裾分けは、土に続く所作だったのではないだろうか。
親戚もいない土地で暮らす私たちは、お盆は山の家で家族だけで過ごす。
久しぶりに集まれば、ジンギスカンだ。
お盆最後の日は、マンションに戻ってきて、朝市で野菜を仕入れて、
ラタトゥイユを作る。
玄米を炊いて、鶏のもも肉を焼き、大きなワンプレートにラタトゥイユをかけておしまい。
作ってから、ビールを飲み本を読み、花火を見る。
自由な時間があるのは、うれしい。
でも、なまけものの自分とお裾分けする人もいない自分は少しさびしい。