胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

死の棘

死の棘 (新潮文庫)

死の棘 (新潮文庫)

身につまされる。
私もこんなふうに夫を責めていたことはないか。
私の場合は不倫ではなく、都会を離れて夫の故郷に住んだことの恨み。
もう少し東京に近ければ。
友達も親戚もいないところで、ひとり子育てして、帰りたい帰りたいと思っていた時、
あの時はああだこうだと責めていた。

結婚している女性には思い当たることも多い話だが、ミホさんの場合はすごい。
そこまで島尾敏雄を愛していたのだろう。

そうして、島尾敏雄の何も解決しない繰り言のような二人の生活の記録もすごい。
ただの夫婦げんかでがない、魂の問題なんだと思わせる。
そうして、こういうものをミホさんも発表させるんだから、ふたりは書く人なんだ。

死の棘

死の棘

 映画も観てしまったけど、やはり小説にはかなわない。街を歩いても電車に乗っても敏雄の不安な独白が表現されてないし、岸部一徳の声を聴くと違う気がする。松坂慶子はきれいで、ミホさんも満足したのではと思った。

ドルチェ-優しく―映像と言語、新たな出会い

ドルチェ-優しく―映像と言語、新たな出会い

ついでに、この本も読んだ。映画が見てみたい。

娘の島尾マヤさんが映画に出てくる。マヤさんは言葉を失ったと書かれてあった。
『死の棘』に出てくる子どもたちは、今でなら虐待通告されてしまうかもしれない。でも、これは島尾家の家族関係。だれかが犠牲になっても成し遂げるものがあったのかもしれない。