居場所の社会学
- 作者: 阿部真大
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2011/08/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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居場所。毎日居場所をめぐる問題にぶつかる。退院してからの居場所。介護保険では、好きな介護サービスを選択できることになっているらしいが、実際はある有料老人施設に入るには、同じ系列のデイサービスに行かなければいけないことは多い。
若い患者さんがグループホームに入るとする。グループホームから日中活動をするように言われる。たいていが同じ系列の作業所へ通う。もちろん例外もある。でも、何がしら日中活動しなければいけない。毎日、作業所かデイケアに通うのが優等生。毎日どこかへ行って欲しいと言われる。「でも、通院とか訪問看護のときは休んでもいいですよね」と聞く。「もちろん、午後だけ作業に出てもらえば」。いやいや午後は通院で疲れてゆっくりしたっていいかもと思うのだが、こんな感じで、専門家という人たちが高齢者や障害をもつ人の居場所を決めていく。自己決定するにも選択肢少なすぎる。いろいろなグループホームを見て決めるのではない、たまたま空きがあってラッキーだから、贅沢はいえない。私なら、アパートで暮らして日中活動に縛られたくないとも思う。
「短時間でアルバイトしたい」という患者さんの希望。まわりは、「まだまだ早い。デイケアや作業所で慣れてきたら次のステップへ」と言う。福祉はステップアップが好きだ。でも、興味のない作業所で、下手すれば交通費の方が高くつき、作業をしても収入なしともなれば誰でもやる気はなくなる。作業所への足が遠のく。まわりは「作業もできないで、就労なんてまだまだ」と評価するかもしれない。てやんでい何えらそうに言っているんだ、と心の中で叫ぶ時がある。あるところで「この方、まだ就労に向けないのですか」と質問したら、「まだ自己カンセリングができていない」と言われたことがあった。「?」である。自己分析ができていないということ? 私が自己分析できた覚えもした覚えもないけど働いていますが・・・。
そういうわけで、専門家は私を含めて信用しない方がいい。でも、福祉サービスの居場所はあるけど、自分で居場所を作っていけない人も多い。当事者活動というか、居場所を自分たちで作る力が必要だなと思うこの頃なので、居場所は政治的でもあるというのはよくわかる。支援者が何もかもやるのではなく、本人の仲間を作る力を大事にしたいとも思う。