高台にある家
- 作者: 水村節子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/09/21
- メディア: 文庫
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まず、『高台にある家』が手に入ったので読み始める。すぐに物語に引き込まれる。小説の中の時代は私の生きた時代より古いのではあるが、なんだか見覚えのある風景や親族や得体のしれない人々なのだ。
主人公の節子は、お金持ちの伯母の高台の家へ預けられるのを皮切りに、小説の登場人物は預けたり預かったり、助けたり、裏切ったりする。こんな風景は、私の小さい頃もよくあったと思いだした。
私も幼児の頃、赤ん坊の弟が生死をさまよう病気のため入院した時、王子のおじさん(祖父の従兄弟だったか、母の弟もこのおじさんのもとで働いていた)という家に預けられた。母方の親せきの中では成功者のおじさんだ。私は何も覚えていないが、飛鳥山公園でよく遊んだと聞いていたからなのか、東京へ向かう新幹線から飛鳥山公園が見えると、懐かしく感じる。何かかすかに覚えているような気もする。いいお洋服も買ってもらったらしい。
母は6人兄弟だが、もう一人預かっている子がいて、一緒に育ったはずだが、今はどうしているのだろう。一緒に育てられたのに、本当の兄弟とは別扱いだったようだ。そもそも、死んだ父親も親戚に預けられて育った人だ。夫は、幼い時に母を亡くし、一時女中さんに育てられている。けっこう昭和には、育てられない時に親族に預けたり、また戻ったりして誰かが面倒をみてくれた。また、女中さんもいたりして、その人は今でいうヘルパーさんではなく、愛着を持てる人で、夫は今でも葉書のやり取りをしている。
そうして、親族や女中さんに育てられるのは、いい話ばかりでなく、暗い影もあり、覗いたらいけない大人の事情というのもあったりする。
そんなことも今では少なくなってきたのだろう。無縁社会というように、親族ネットワークは弱くなっている。
それにしても、この本を読んだらどっと記憶が蘇ってきてしまった。小さい時に出た豪華なホテルでの結婚式、父の祖父母のこと、東宝のニューフェースだったというあの人、自分のルーツ、大人達のひそひそ話。実は暗い闇があることは承知で見ないようにしていた。それが噴き出しそうになったので、また重石をしてしまった。
感傷に浸っている場合ではない。今日から仕事。どんなものを背負っていても今を生きるしかない。つくづく現実的な自分は小説家にはなれないのだな考えた。
このまま水村美苗の『母の遺産』を読んだら、母との葛藤までが隠せないものになってしまいそうなので、ひとまず図書館から借りて来た『日本語が亡びるとき』(水村美苗著)を読みはじめた。
- 作者: 水村美苗
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/11/05
- メディア: 単行本
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