胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

食の未来のためのフィールドノート 上・下巻

食の未来のためのフィールドノート・上: 「第三の皿」をめざして:土と大地

食の未来のためのフィールドノート・上: 「第三の皿」をめざして:土と大地

食の未来のためのフィールドノート・下:「第三の皿」をめざして:海と種子

食の未来のためのフィールドノート・下:「第三の皿」をめざして:海と種子

チェルノブイリの祈り』を図書館で借りたときに、新刊コーナーにこの本があり借りました。
上下巻なんて読めないかなと思いましたが、連休の2日間で読んでしまいました。

チェルノブイリで人間の恐さを思いながら、ダン・バーバーを読むと希望も持てます。アメリカ人ですから。

それにしても、あのモンサントアメリカでも頑張っている有機農業や自然農を行っている農家の方達がいると知りました。

出てくる登場人物が魅力的です。
みんな変わり者です。おかしいと思ったら「ADHDと診断された」というスペインのシェフ。
でも、こういう人たちが、世間とは違うことにチャレンジしていきます。常識なんて関係ないからできることもあると思います。
自然の多様性があるから、良い農業が生まれるというのが本からのメッセージがあります。
人間も均一ではなく多様性を持たないと、アイデアも広がりも生まれないということを本書を読んで感じました。

それと、ダン・バーバー他登場人物の食への熱意の底に幼少期の思い出があります。農場で育ったり、お祖母さんや母、叔父たちの食の影響があります。


そういうと、食育が大事だということになり、均一的な食教育が行われてしまう。そうして、こどもは興味を無くす。そうではなく、身体で感じることなんですね。農場の美しさとか、畑でもいだ野菜の美味しさとか。知識ではなく、体験が今の子どもたちに圧倒的に不足しています。

登場人物の努力の一方で、モンサント社の力も増しています。

大学の重要ポストにいた育種研究家は、モンサントからのランドアップ(除草剤)に耐性のある小麦の開発を迫られます。大学は、多額のお金が入るので歓迎します。
でも、次のように言って断わりました

農民は何万年もかけて小麦を改良してきました。毎年改良しては翌年に新しい種を蒔いてさらに改良を進めてきました。自分で収穫したものを植え直すのは、人類の最も古い権利のひとつではないでしょうか。バイオテクノロジーはその権利を奪います。ランドグランド大学の活動が、何万年も続いた伝統をうばってもよいものでしょうか。おそらく簡単にできるでしょう。でも僕はそこに加担したくない。だから返事はノーです。

そして、育種研究家は大学を去ります。
彼なしでも、大学はモンサント社に協力するでしょう。他の大学は、ほとんどモンサント社に協力しているようです。

ダン・バーバーとその仲間たちの努力は今どうなっているのでしょうか。
アメリカで「家庭菜園禁止法」というのができたと聞きましたが、なんだか彼らを懲らしめるための法律だったのではないかと心配します。


それにしても、この本を読んで「美味しいものが食べたい」と思いました。
最近、スーパーに行っても買いたいものがないのです。

魚は、種類が少ないというか、値段が高い。日本近海物が美味しい魚と言われていたけど、今ではノルウェー産の方が安全なように感じる。肉売り場は、アメリカ産肉類のコーナー面積が増えてきた。
野菜は、ほとんど産直、朝市で旬の物を買うようにしている(その野菜が無農薬という訳ではないけれど、地元の農家を応援するため)。
チーズやパンも美味しいものを食べようとしたら、値段が高い。

お金がないと、安い一斤100円のパンや安い肉を買わないといけない。安いものが歓迎される。安いパンを作るには安い小麦が必要だということで、モンサント社の開発した遺伝子組み換えの小麦を使うかもしれない。
世界の飢餓を救うために、小麦を増産しなくてはいけないとも言われる。


でも、本当にそうなのだろうか。
今、シリアで飢餓がある。食料が届かない。
アフリカで飢餓がある。
それは、食料が足りないという問題ではない。
いつも、私たちの前で問題がすり替えられ、目の前のお金に飛びつくように情報が操作されているような気がする。

そうして、地球を汚していく。温暖化対策というけれど、農薬、化学肥料の害も大きいことは日本ではほとんど言われない。日本の農薬の使用量は先進国で大差をつけてトップ。中国の野菜が危ないどころではない。

夕方、スーパーに行く。棚にはパンがいっぱいある。これらは全部売れ切れるのだろうか。肉や魚は。日本は、食品の廃棄物がすごく多い。まずこれらを考えていくのは、教育と啓蒙なのかもしれないけれど、学校に期待できないので、どうしたらいい方向にいけるのだろうか。

それでも、この本を読むと、自分のやれることはやっていこうと思わされる。いい啓蒙書だと思いました。