胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

映画『ゼロ・ダーク・サーティ』

 

 『ゼロ・ダーク・サーティ(Zero Dark Thirty)』

 2013年

 監督:キャスリン・ビグロー

 

立て続けにキャスリン・ビグロー監督作品をみる。

アメリカのCIA、特殊部隊が2011年5月2日にアルカイダの指導者、ウサーン・ビン・ラーディンを殺害するまでの事実に基づいたフィクション映画。

主役のマヤはCIAの分析官。捕虜たちの拷問にも同席する。拷問が世界の非難を浴びる中、マヤがウーサン・ビン・ラーディンの居場所をつきとめるために考え抜く。上司は確証がないと動かない。

アメリカのテロ撲滅映画かというとそうでもない。

なにかやるせない雰囲気がただよう。なんのために作戦をしている。アメリカ政府や世界の世論をみながら仕事する男性に比べて、マヤは標的を捕まえること、殺すことしか興味はない。なにかつかれたようだが、彼女は正義のためとか国のためでもないような感じがする。彼女の素性は語られない。でも、友達も恋人もいないようである。

ビン・ラーディンの潜むパキスタンへ侵入シーンはハラハラする。しかし、罪のない女性も殺す。

アベンジャーズのヒーローは出てこない。生身の兵士の作戦は怖い。でも、実際こんなことしていたら、人間の精神はおかしくなりそうだ。

アルカイダのボスは殺された。アメリカは国民にテロへの仕返しをして、国民は拍手した。

中東では「アメリカのテロを許さない」と叫ぶ人たち。どっちがテロリストなんだろうと思わせる。ビン・ラーディンは死んだけれど、中東はますます混沌としている。相変わらずアメリカが口も武器もつかっている。

この映画は、アメリカ賛歌ではない。キャスリン・ビグロー監督は、悲惨な出来事を娯楽性高く飽きさせないで描く。そして、マヤはなぜ泣いたのだろう。行くところが見つからない。一人殺して、どこへ向かおうとしているのか。