礒崎純一『龍彦親王航海記』
澁澤龍彦の伝記である。わたしも若い頃好きだった。『ねむり姫』や『高丘親王航海記』等は日本文学の中では気に入った作品で、いまでも私の本棚にある。澁澤龍彦の訳した『ポトマック』(コクトー作)もずっと持っていた。いまでも絵を覚えている。これはどこかで手放してしまったようだ。
この自伝でいちばん衝撃だったのは、澁澤龍彦がハンサムだったこと。ジャニーズ的に今でも通用するようなイケメンではないか。わたしはサングラスをして長髪の澁澤龍彦の写真しか見たことが無かった。そうか、顔が良いから隠すためにサングラスをしていたのではないかと思った。
澁澤龍彦の物語は虚構で下敷きがあり、メルヘン。人間の葛藤やモラルもないという批判もあるようだが、人間のドロドロがないというところが私は気に入っていたのかもしれない。20代の大学では卒論が泉鏡花だったので、その流れで澁澤龍彦の物語がすんなり私に入ってきた。
澁澤龍彦ぐらいなオタクや教養がある人は、現代にいっぱいいるだろうけど、だれも彼のような物語は紡げない。