胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

北林谷栄『九十三齢春秋』

 

 

古本屋で北林谷栄さんの本を見つけて買ってしまう。

なつかしい役者さんだ。老け役といえば北林谷栄であった。

ずいぶん若い時分から老け役を演じた。

そのきっかけは、宇野重吉久保田万太郎演出の舞台での老け役に、北林谷栄を推薦してくれた。

宇野重吉北林谷栄は左翼劇団出身。大政翼賛会久保田万太郎宇野重吉をいじめるので、「重ちゃんに恥じをかかせられない」と工夫して老け役を演じたそうである。

俳人として知っている久保田万太郎は翼賛会だったのか。

でも、あの頃はそうだったのだな。

 

北林谷栄さんの映画を見てみようと、1956年版『ビルマの竪琴』をみる。

思ったよりいい映画だった。

主人公の水島上等兵役の安井昌二の演技は純真さがあって嫌味がない。

三国連太郎も涼し気ないい男だったのだな。

そして、日本語ができる現地の物売りのおばあさん役の北林谷栄は、画面に出るだけでほっとするユーモアがある。

きっと現地の人の研究をしたのだろう。

彼女は地方の旅公演に行ったときに朝市を見て回るそうだ。そこで気に入った衣装を着ているおばあさんに、その服をもらう。おばあさんを洋服屋に連れて行って、新しいのを買ってあげて交換する。そうやって老け役の衣装も集めていたと書かれてあった。

研究熱心で肝の座った役者であった。