胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

子離れしなくちゃ

 萩の花が終わりかけている。
 この秋の萩はきれいだった。花をたくさんつけた。庭の萩は、八王子の花屋さんから買って、八王子の貸家の庭で育てたもの。山の家に移植して増やしてきた。
特に白萩はきれいだったのだけど、山に植えたら繊細なしな垂れる白萩ではなく、茎の太い天に向かうような白萩になってしまった。
 でも、今は雨でしな垂れている。
「花から実へ」という季語があるが、すっかり秋になり寒くて薪ストーブを焚いている。

 先週は、千葉の実家へいくついでに息子たちと食事をした。
 次男がバイトする銀座の和食のお店。
 前の日に長男はタイ旅行から帰ってきて、次男の住む日本橋の弟のマンションに泊まっていた。
 そして、私が東京に着いたので、3人で銀座の店へ行くことに。
 次男は、働くお店にお客として来て緊張している。
「お母さん、お金はあるの?」
「大丈夫。お父さんから1万円もらってきた。お母さんも少し持っている。足りなかったら、あなたのバイト料からひいてもらおう」


 次男が働く姿なんて想像できない。
 まったくだらしない、掃除しない、愛想はない。
 長男は昔から大人に好かれて、働き者であった。
 保育園の時、土曜保育にお願いしていたとき、先生に言われたのだ。
「太郎君いると助かるわ。小さい子の相手をしてくれて。土曜日は先生が少ないから」
そうして今でも、「大学のゼミの子たちを車に乗せて、沿岸の調査へ行く」と言う。あんたもゼミの学生でしょう。
 どこでもお父さん役になってしまう長男と違って、次男はあくまで次男である。自分がやらないですむなら、箸一本動かさない。
 なぜ、長男と次男では違うのか。
 私たちがいつまでもかわいいと甘やかしたからかもしれない。

 次男のバイト先では、スタッフの方々ににこやかに挨拶された。店長さんは名刺をくれ、外国人のスタッフの方は次郎の好きな飲み物を持ってきてくれ、調理場からは注文していない天ぷらの盛り合わせがサービスで出てきた。
 どうやら、きちんと働いているようだ。
 次郎が最年少でもあるので、かわいがってもらっているようでもある。
 厳しいお店なので辞めるバイトも多いという話だったが、部活の厳しさに比べたら「なんてことない」と次郎は言う。ほとんど365日のうち360日ぐらい部活に精を出していた成果がこういうところにあるのね。だから、体育会系が気に入られるのだ。
 しかし、次男の体育会系は表向きの姿で、実はアニメ好きのいくらでもひきこもれる体質もある。住んでいるところが秋葉原に近いのを心配していたが、秋葉原は飽きたとのこと。

 そんな次男の東京暮らし、長男のタイの話を聞きながら、気持ちよく食事をした。ふたりとも大学の話はしない。勉強しているのかは怪しい。

 食事の後、長男は新幹線で仙台に帰ると言うので、東京駅まで3人で歩き、「じゃあね」と別れた。

 その晩は私も弟の部屋に泊まり、遅く帰ってきた弟と話し込んだ。弟のマンションの次男の部屋は覗きもしない。どんなことになっているか、見るのも恐い。汚いだろう、アニメでいっぱいかもしれない。

 次の日、千葉の実家へ行く私は、昼からバイトがあると言う次男と駅まで一緒に行って、別々のホームへ。
「じゃあ」と言って別れた。

 この春まで、毎日一緒にいた息子だ。
 お彼岸といえば、あんこが大好きな次男のためにお萩をたくさん作った。
 色々な場所に一緒にでかけた長男は、今はひとりで日本を飛び出している。

 息子たちには小さい時から、高校を卒業したら家を出ること、岩手も出ること、日本も出てみること、でも親にはお金がないので自分たちで生きることを言ってきたが、なかなかよくやっている。

 あんなに一緒にいた息子たちとは、年に数回しか顔を合わせることはなく、もう違う人生を自分の人生を歩んでいるのをみると、不思議な感じもする。

 あっけないじゃないか。

 さびしいけれど、またいつか一緒に何かすることもあるかもしれないし、助けが必要なことも、助けられることもあるかもしれないけれど、手が離れて行ってしまったことは事実だな、としみじみしたのでした。