東畑開人著『居るのはつらいよ』
居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)
- 作者: 東畑開人
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2019/02/18
- メディア: 単行本
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新刊をいちはやく買って読むなんてことは滅多にないことだけど、前作『野の医者は笑う』が面白かったので、買ってみる。相変わらず面白い、使う比喩もわたしのつぼにはまる。そしてデイケアのお話。わたしはデイケアには配属にならなかったが、デイケアのPSWがお休みに行くと助っ人にいったことがある。まさに助っ人は何をしていいかわからず、それこそただいるだけ。みんなに話しかけたり、ゲームしたり、ソフトバレーをしたり。ソフトバレーなど明確に自分の役割があるときは助かる。そして、デイケアのメンバーは若干の入れ替えはあるものの、ほぼ同じメンバーで毎日を過ごす。(相談室は、毎日事件が起こる。電話一本でわたわた動く。「事件は現場で起こっているですぜ」と訪問看護へも行く。そしてなんか仕事した気になる。)
「動かざることデイケアのごとし」(P203)には笑った。笑わしてくれながら、ケアとセラピーの性質を説き、人間ドラマが展開され、最後にミステリーとなる。スタッフたちが次々やめる原因は何か。その奥に悪の黒幕がいる。
「僕らを損なってきた悪しき力がなんであったか。それがケアとセラピーの二人といかにかかわっていたのか」(P279)
わたしたちを損なうもの。病院だけでなく施設でも学校でもあらゆるところに潜んでいるもの。ここはだいたい予想はついた。でも、はっきり言葉にして表現されると、わたしたちは損なわれていると実感される。
それとは別に、さいごのお別れの日々には泣いた。
Twitterでも「本が届いて開いて、立ったまま2章読んでしまった」と書いている人がいたけど、わたしも東畑ワールドを旅して呆然としている。