雪の轍(わだち)
『雪の轍』を観てきました。3時間以上の映画です。
ガチンとやられる映画が観たかった。
フリーランスになったので、仕事調整すれば平日でも映画が観られます。
でも、なかなか観たいものがなかったのです。
観たいなと思っても、短期間しかかからなくて、見逃したりしていました。
河瀬直美監督の『あん』を観ようかと思いましたが、躊躇してしまいます。私の好きなあんこのお話です。観に行こうと思うのですが、なんだか話がもうわかってしまうようで、ただ観てきて終わりという感じになりそうで、お金がもったいないかな、DVDでいいかなと考えてしまいました。
よくわからない映画が観たかった。あれは何だったのだろうと、あとから考えるような。小難しい会話とか、荒々しいもの。
『雪の轍』には、そういうものが期待されます。
劇場に早く着きすぎて、窓口の前で待ちました。そこに私と同年配の女性と一回り以上は上の男性も来て、3人で話す。
「カンヌ映画祭のパルム・ドール賞だもの。アカデミー賞よりいい映画が受賞するから、期待できるかも」と男性。
「夏休みだから、観るものなかったものね。子供向けばかりで」と女性。
この町にも映画好きが多いのだな。
帰りに見たら、20人ぐらいは入っていたけど、おじさんおばさんばかりでした。意味わからない映画ばかり観てきた世代ですものね。
お話した女性は相当映画を観て歩いているらしいのですが、『あん』は原作を読んでしまったから、いいかなと思ったとのこと。
そう、日本の映画が原作があったりドラマの映画化だったりして、面白くなくなっている。
黒沢監督のような映画が少なくなった。河荑直美も昔のように、オリジナルを作ればいいのにと思いました。
『雪の轍』。3時間が短く感じました。はじまりは、会話で進む劇のようで、睡魔に襲われるかと思いましたが、飽きなかった。家族同士の本質を弱さを突いてしまう会話。ありますよね、こんなときが。対決しないように私たちはやり過ごしています。そうして、弱さも含めて受け入れられ、相手のことを思うのも家族なのですが。
ネタバレになるから、あまり書けませんが、少年のアル中父親役がかっこいいと思ったら、最後にきめてくれました。心の中で願ったようにしてくれて、びっくり。
最後に主人公が、気持ちを入れ替え、自分の原稿に向かえるようになった気持ちの転換がいまひとつわかりませんでしたが、じっくり考えてみましょう。
〈制作:トルコ、フランス、ドイツ 監督・脚本:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン 脚本:エブル・ジェイラン 2014年 カラー 196分 〉