映画『団地』
『団地』 2016年
監督:阪本順治
久しぶりの日本映画。大阪近郊の団地が舞台。漢方薬店をたたんで団地に引っ越してきた夫婦と噂好きの住人たちのお話なんだけど、これも宇宙が出てくる。
大楠道代、石橋蓮司、浜田マリ、斎藤工など芸達者な役者たちがそろって飽きさせない映画になっている。最後のシーンは、唐突だけどほっとする。何が現実なのか、別の世界ではわたしたちは一緒にいられるのではないか。
団地に住みたくなっている。
友人が団地に引っ越した。一人は独身。都営団地で高齢者が死ぬまで暮らせるように設計された団地。多摩のほうにある。もう一人は、夫婦。我が家のように山の中に素晴らしいログハウスとこれまた素晴らしい広い花の庭を持っていた。川も流れている。まったく公園のような庭だ。でも、70代後半になって体力がなくなった。彼らの娘は東京にいて、遠い山の中の家の世話などできるはずもない。売ることにして、ネットに広告を出したらすぐに買い手がついてしまった。会ったらこの人ならという人だったので、故郷の東京近郊の団地に引っ越していった。
2人とも都心には電車に乗れば1時間半あればつく。そして散歩できる公園や散策路がいっぱいある。いいな。散歩したい。いまの願いは散歩したい。もちろんウォーキングできるけど、最近は熊がうろうろしていて昼の目撃多くて右にも左にも歩けない。1万歩あるいても店もなく人にも会わない。店や町にいる人を見ながら歩きたい。
わたしたちも薪割りや草刈りができなくなったら、町に下がらないといけない。うちは県庁所在地に老朽化したマンションに小さな部屋がある。そこが終の棲家になるだろう。団地みたいなものだ。草取りも雪かきもしなくていい。
でも、友人がうらやましいのは東京近郊ということだ。わたしは東京が懐かしい。これはいつまでも続くのだろう。そこで青春を過ごし、歩き回った町だ。
団地に引っ越した友人とコロナ感染が終息したら、新宿の柿傳ギャラリーで懐石ランチ食べましょうと約束する。しかし、ランチを食べるために新幹線往復2万円以上かかる。年金暮らしになったら、東京へも行けなくなる。そういう意味で東京近郊というのがうらやましい。月に1回は観劇したり、ランチしたり人に会う。いまだにランチにいける友だちが地元にはいないで、東京なのだ。なぜかっていうと話題があう。焼き物の話、映画の話。フリーターの気持ち。
団地に憧れるというより、東京に帰りたいのだろう。でも、それはかなわない夢でしかない。
山の中で熊と鹿、猪と猿も加わって仲良く生活していかないといけない。