吾が住み処ここより外になし
- 作者: 岩見ヒサ
- 出版社/メーカー: 萌文社
- 発売日: 2010/05/28
- メディア: 単行本
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田野畑村の明戸地区が昭和56年に原子力発電所建設の候補地としてあげられ、県としても受け入れに本腰を入れようとする方向性に動いていた。その原発誘致に先頭に立って反対したのが岩見ヒサさんだった。この本には、その反対運動に関しては少ししか触れられていない。
岩手に原発がないのは、たまたま関西人である岩見ヒサさんが田野畑村を愛し、婦人団体と漁師さんたちと勉強会をし、議員さんたちに訴え、村長も「お金をもらっても幸せにはならない」というまっとうな考えの方だったという岩手の人たちの良さが表れていたと思う。もちろん、岩手のチベットと言われた地方が生き残るためには、誘致してお金をもらおうと賛成した人たちもたくさんいたらしい。
同じ時期に、青森の六ヶ所村も候補地となり、そちらは受け入れを決めた。しかし、放射能だから岩手県が作らないからよかったというものではない。福島県の爆発は岩手にまで影響をもたらし、六ヶ所村の処理液は海を汚している。どこに作ろうと私たちに影響するのだが、岩手に作らせなかった岩見ヒサさんはじめ田野畑村の人々を誇りに思う。
この本は、岩見ヒサさんの保健師として生きてきた記録だが、ヒサさんの夫たちがかっこいい。結核だったはじめの夫も田野畑村に誘った2番目の夫の対山和尚もなんとフェミニストで芯のある人たちなのだろう。きっとヒサさんが素敵な人だったのだろう。