胡桃の木の下で 

日記ではなく備忘録になっています。忘れっぽくなってきたので。

東畑開人『心はどこに消えた』

 

東畑開人さんの『野の医者は笑う』と『居るのはつらいよ』は面白かった。『居るのはつらいよ』はその年のわたしのベスト1の本だと思った。だから久々の単行本に期待した。『週刊文春』の連載をまとめたものである。

はっきり言おう。がっかりした。面白くなかった。面白かったのは「ちょっと長めの序文」だけである。連載をまとめるのは時事ネタが古くなって面白くないのか、なぜ面白くないのか考えた。理由はカウンセリングにやってくるクライエントたちだ。作者がいろいろな事例を混ぜ合わせた創作なのだが、なぜ面白くないのか。

前作品の沖縄の人たちは生き生きしていた泥臭くてうさん臭くても生きた人たちだ。今回のクライエントはセレブっぽい。カウンセリングを受けられるだけのお金の余裕がある人たちだ。悩みも不登校や不倫やなんやら、よくあるもの。かっこ良すぎるわ。もっと悲惨じゃないのか、と言いたくなる。

こういうのを読みたいわけではないとわたしは思うが、この本は評判が良いようで、東畑さんはどんどん売れっ子になっていく。

がんばって最後まで読みましたが、がっかりよりさびしい気持ち。もう、クライエントのことではなく、ちがうネタを探してほしいと思った。